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兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久なるを睹ざるなり(『孫子』)
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『大世界史 現代を生きぬく最強の教科書』
池上彰・佐藤優、文春新書、830円+税

『新・世界史』に続く二人の対談ですが、本当に伝えたいのは、10章、11章、それから「おわりに」の部分なのではないでしょうか。

極端に実学に偏っていく日本の教育。本書にもありますが、「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」というのは、慶応義塾の塾長であった小泉信三の言葉とか。政治でも自分たちの欲するように世界を理解する態度としての「反知性主義」が罷り通っています(この言葉は多義的なのであまり使いたくない)。

池上さんが1章で言われるように「私たちが歴史を学ぶのは、一言で言えば、今の自分の立ち位置を知るため」なのですが、上記のようなことが起こっていることを踏まえて、実践できるかでしょう。単に単語を覚えるのは「歴史に学ぶ」以前の話で、「歴史を学ぶ」ことですらありません。歴史に興味を持つきっかけとしてはそれでもいいのですが。

過去を学ぶというのは、現代、将来をどう生きるかということですからね。

本書を読んで気になったことをいくつか。

一つはトルコ共和国のエルドアン大統領でしょうか。
トルコというと、親日国として知られています。エルトゥールル号遭難事件は映画化もされますし、日露戦争での日本の勝利を喜んだという話もあります。露土戦争といって、クリミア戦争を含めて、トルコとロシアは三百年以上も戦っており、二国間の対立はいまに始まることではありません。
この頃はまだオスマン帝国で、第一次世界大戦で敗戦国となると、トルコ独立戦争、トルコ革命が起こって、ムスタファ・ケマル(アタテュルク)を大統領とするトルコ共和国が成立します。トルコ革命は日本の明治維新と並んで近代化に成功した例とされています。
トルコ革命ではスルタン・カリフを廃止するとともに、政教分離、世俗化を推し進めたのですが、この文脈でイスラム回帰的な行動を取るエルドアンを捉えると見誤りますね。

もう一つは近代ギリシャ。人種的には古代ギリシャとはほとんど連続していません(混血が進んでいる)。イギリスとロシアの緩衝地帯に人工的に造られた国家ですが、「存在すること自体が仕事」とは言い得て妙ですね。近代ギリシャの成り立ちを見るとよくわかります。肯定はしませんが。

それからドイツのメルケル首相でしょうか。生まれは西ドイツですが、父はルター派プロテスタントの牧師で生後すぐに東ドイツに移住します。学生時代、政界入りまでは東ドイツです。どのような思想的な背景を持っていて、どのような将来を目指しているのか。気になります。

あとは、
「今の日本は、歴史感覚がおかしくなっている。現在と過去を結びつける勘が鈍っているから、「永遠の0」を見て、泣いたりできるのでしょうが、現在と歴史をつなぐ良質の映画やテレビドラマが少なくなっています。」(佐藤、242ページ)
同感。私もスクリーンで見ましたが、最後までなくポイントがわかりませんでした。
特攻に反対していたのに、なぜ最後は特攻に向かったのか心境の変化が描かれておらずさっぱり。

このシリーズは出せば毎年ベストセラーになるのではないでしょうか。

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