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兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久なるを睹ざるなり(『孫子』)
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「戦国人物紹介」

新年・武田家スペシャル(5回シリーズ)

 
武田勝頼・5-1
 
因果関係、すなわち、この結果をもたらしたのは何が原因か、を判断することは難しい。
 
1570年、姉川の戦い(注:これは徳川家での呼び方)で織田・徳川連合軍は浅井・朝倉連合軍を破ったが、浅井・朝倉氏はこの戦いに敗れてすぐに滅亡したわけではない。むしろ、戦後は比叡山や一向一揆と結んで反撃に転じたため、信長は弟信治や森可成(長可、蘭丸らの父)、坂井政尚らを失っている。有名な比叡山の焼き討ちはこれら一連の流れの中で起きた事件である。その後も、浅井・朝倉氏は反信長包囲網の一端を形成し、信玄などとも連携して(実際は連携し損ねて信玄の激怒を招くのだが)信長を苦しめた。浅井・朝倉両氏が滅亡したのは、信玄死後の1573年である。姉川の戦いにおける敗戦が浅井・朝倉両家の滅亡の(少なくとも直接の)原因とは言えない。
 
武田家の場合も、1575年に長篠の戦いで大敗してから、1582年に滅亡するまで七年ある。長篠後の態勢立て直しがうまくいかず、滅亡につながったとすれば、直接の原因ではなくても、間接的な原因としては十分かもしれない。ただ、もっとほかの直接的な原因がなかったのかを検証する必要はあるだろう。
 
さて、武田家滅亡の遠因を信虎に求める人は皆無と言っていいが(そこまではさかのぼらない)、信玄の後継者選択(それは外交問題とも関係するが)に遠因を求める人は少なくない。今川家を巡る外交問題で嫡男義信(今川義元の娘を娶っていた)、およびそれを支持する層と対立した信玄は義信と飯富虎昌らを自害させた。反対派を粛清しなければ、自分が信虎にやったように、クーデターで国を追われる可能性もあったのである。
 
以後は四男の勝頼が事実上の後継者と目されたが、第二の義信になることを恐れた信玄は最後まで勝頼を後継者として扱わなかった。ここから考えると、愛妾の子であった勝頼を後継者にしたいために義信の謀反をでっち上げたという説はどうも信頼を欠く。後継者というのは指名だけすればいいという話ではなく、徐々に自分の権力を移行していくものであるから、逆に言うと、いつ自分の立場を脅かす存在になるかわからないのである。
 
父を追放し、嫡男を殺した、猜疑心の強い信玄のことである(そう思うと、生き延びた典厩信繁はよほど信用のある人物だったということになる)。義信も勝頼も無位無官のままであった。せいぜい、義信の「義」の字が将軍義輝の偏諱であったことくらいである。信長の圧力という説もあるが、信長と信玄は終始敵対していたわけではない。勝頼の妻(信勝の母)は信長の養女であるから、信長の仲介で任官していてもよさそうなものである。武田家、というか信玄側の事情であったと考えた方がよい。
 
親と子が争った例は枚挙にいとまがない。信玄は遺言に当たって勝頼の子信勝を家督と定め、勝頼はあくまでも「陣代」(後見人)としたという(ただ、最近の研究では、信玄の死後、武田姓に復して家督を継ぎ、「武田勝頼」と名乗っていることが判明している)。
 
あまり知られていないが、信長は1575年、織田家の家督を早々に嫡男信忠に譲り、自らの後継者であることを内外に示している。北条家や伊達家の例を見ても、後継者を早めに定めておくことは、のちの内紛を未然に防ぐことになる。「三国志」の呉の孫権のように、早めに太子を決めても、(太子が死んでしまって)後継者争いが起こることはあるのだが、呉の場合は陸遜ら重臣多数も失ってしまったから、後継者の選択というのは重大事なのである。

家督争いがなく、五代続いたというのは稀有なことなのだ。しかし、なぜにショートボブ。
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