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兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久なるを睹ざるなり(『孫子』)
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歴史の話を書くのに比べて、現に起こって現在も裁判中の事件を書くのは難しい。被害に遭われた方、亡くなられた方、そしてその関係者が存在しているからである。

秋葉原無差別殺傷事件について考えてみたいと思うのである。

この事件を聞いて思ったのが、いままでの無差別殺人事件とは少し異なるのではないかということである。二年前に事件が起こったときに、前の前のブログ(プチコミ)でコメントした記憶がある。何度か起きている無差別殺人事件については半ば辟易(閉口)していて、コメントすることはないのだが、この事件については(特に被告の人物については)印象に残っている。

無論、被告のやったことは許されることではないし、まともな思考能力を持つ人間であるようだから(それゆえにこの行いは不可解でもある)、責任能力が認められて極刑は免れない。「ネットに依存した馬鹿」だと切り捨てる(思考から切り捨てる)ことは簡単である。こんな事件のことを振り返りたくないという人も大勢いるだろう。しかし、どうしてこのような事件が起こったのかを考えてみなければ、私たちがここから得られるものはなく、また同じような事件が起こらないとも言えない。現に今年に入って、車での暴走(とナイフを振り回す)という点が抽出された、模倣的な事件がマツダの工場で起きている。

先週、被告人質問がおこなわれて、その発言に目を通した。母親の虐待というのもあるが、被告に同情しているわけではない。また擁護、弁護するつもりもないし、事件当時に一部で見られた「格差社会の英雄」などといった英雄視にも与するものでもない。

どうしても残るのが、これまでの無差別殺人とは違う動機の点である。これについては本人も語るべく努力しているのだが、「人を殺してみたかった」「誰でもよかった」という殺人嗜好的な考えがあったわけではないし、自殺願望はあるが自殺できず「死刑になりたい」から事件に及んだという動機とも異なる。

被告にとっては「帰る場所」、居心地のいい場所であったネットの掲示板。しかし、荒らしやなりすましが出てくる。(荒らしはスルーしたとしても)なりすましは許せず、ネットで嫌がらせをしてきた人たちに、事件を起こすことで本当に嫌がっていることを伝えたかった、という言い方をしている。ここが理解に苦しむ部分である。

どこにでも普通にいるような(時にひよわにすら見える)被告がどうしてこのような事件を起こしたのか。境遇に思いを致すと涙まで出てくるのだが、彼をここまで追い込むようなもの(それは目には見えない)はなんだったのか。

今回の事件、動機にはネット(の掲示板)が深く関わっている。この文章を書いているのもネット上であるし、常日頃ネットに慣れ親しんでいる身としてはまったくの他人事としては割り切れない部分があるのである。むしろ近い立場にある者として、何か被告について少しでも理解できることがあるのではないかと考える。報道番組では被告のことを理解しようともせず、ネットについてもいままで通り非日常の「仮想」であるかのような取り上げ方しかされない。しかし、それでは被告の心情は理解できない(繰り返すが、殺人者であることには間違いないのだから早く裁判をやって極刑に処せばいい、というのもわかる。被告が何をやってもおかした罪は償えるものではない。しかし、動機も何もわからないままに被告を極刑にしても、われわれはそこから何も得られないのである)

誰か彼を見てくれる人が一人でもいて、相応の場所に置いてあげれば、まじめに働いてまっとうな人生を送れたのではないかと思わずにはいられない。しかし、世の中にそんな境遇にある人はわずかで、社会に出てもいじめやいやがらせというものは絶えないのである。学校時代と異なり、仕事を辞めない限りは永遠に続くといってもいい。

ネットでの掲示板も現実の人間が見て書き込むのだから、現実に変わりはない。決して仮想の世界ではないのだ。しかし、現実の世界といっても、現実とまったく同じではない。相手の顔が見えないことが普通であり、現実に誰かであることの特定はきわめて困難である。また匿名性ゆえに感情、表現がエスカレートしやすいという側面も持つ。もちろん悪い面だけではない。いい面も多々存在する。使っているのが現実の人間なのだから、現実のいい面と悪い面の両方があるのが当然である。

考えがまとまらないので、またあらためて別の機会に考えてみたいと思う。
 
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