忍者ブログ
兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久なるを睹ざるなり(『孫子』)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

7月28日(水)のネタ振りの3-1。

『世界は日本サッカーをどう報じたか「日本がサッカーの国になった日」』
木崎伸也、ベスト新書、724円+税

今回のW杯(注)における日本代表の評価、今後について的確に記している一書。

注:「ワールドカップ」と言えば、サッカーのワールドカップを指す。
  「ダービー」と言えば、競馬でイギリスのダービーを指すのと同じ。
  また、「W杯」という表記はFIFAでは推奨していない。

今大会での日本代表は、大会前の親善試合で四戦全敗という惨憺たる結果となり、いままでの戦術の見直しを迫られた。そこで一か八か、博打的な賭けに打って出たのが、例の超守備的布陣である。前線の3人(本田、松井、大久保)しか攻撃していない、システム的に言えば「9-1(守備が9で攻撃が1)」だ、などと酷評され、試合自体も退屈で面白みのないものになったが、とにかく日本代表はこの超守備的布陣(弱者の選択である)で予選リーグを戦わざるを得なくなった。これは、いままでの日本代表が積み重ねてきた戦術(例えば、中盤でパスをつないでゴールに迫る)とはまったく異質のものである。ともかく、この戦い方が当たり、初戦を「不屈の獅子」カメルーン(五輪での優勝経験もある)相手に1-0で勝利。2戦目の対オランダ(結果的には準優勝したチームである)も敗れはしたが、最少失点で切り抜けた。

そして、ここで選手たちが驚異的な成長を見せる。第3戦、引き分けでも予選リーグ勝ち抜けが決まっていたデンマーク戦で、日本代表の選手たちは積極的に「勝ち」を狙いに行くのである。外国のメディアに「ブラジルのようだ」とまで評された華麗な攻撃で、デンマーク相手に3-1で完勝するのである。この試合は、これまでの日本代表の試合では最高の出来と言えたかもしれない。

自国外のW杯(要するに2002年の日韓共催を除いて)で初の予選リーグ突破を果たした日本代表。第3戦での戦いぶりから、決勝トーナメントでの活躍が期待されたが、パラグアイ戦での戦いは世界を失望させるものだった。お互い、初のベスト8をかけた戦いということもあってか、決め手を欠き、試合としてはまったく退屈なものとなってしまった。

今大会の日本代表の超守備的布陣は、大会前の親善試合の惨敗がもたらした緊急避難的なもので、これが今後の日本代表の戦術のスタンダードになるものではない。今大会優勝したスペインの華麗なパスサッカー、オランダのトータルフットボール、ブラジルの個人技など、各国にはその国が持つ伝統的なプレイスタイルがある。もちろん、伝統的に堅い守備からカウンターというプレイスタイルだったドイツに、今回、パスから積極的にゴールを狙う姿勢が加わるというように、伝統的なプレイスタイルに固執する必要はまったくない。

しかし、日本にはまだこれというプレイスタイル、「形」が存在していないのである。規律を守り、「フラット3」という守備列を敷いてサイド攻撃を狙ったこともあるし、海外で活躍する選手たちが中盤で自由にボールを持ち、パスサッカーを展開しようとしたこともある。日本が今後どういうサッカーを目指すのか、そのために代表監督を誰にするのか(早く選考してほしい)注目していきたい。

上記を要約すると以下のようなことが言える。
・今大会での超守備的布陣は博打的な要素だったこと
・しかし、それがうまく当たって、予選リーグを勝ち抜いたこと
・ただ、第3戦だけは、積極的な攻撃を見せ、魅力的な試合だったこと
・それなのに、決勝トーナメントのパラグアイ戦は試合としては退屈だったこと
・日本は日本のプレイスタイルを持つ必要がある
・場当たり的なサッカーをしても、いつまでたっても強くならない

おまけ
初戦のカメルーン戦で右サイドからセンタリングを上げて、本田の得点をアシストした松井大輔の『ドリブルバイブルDVD』を買いましたが、帯に「もっとリスクを冒(おか)せ!」って書いてあるんですよね。そして、冒頭に掲げた本にも「サッカーというのは、状況に応じて判断を変え、自らの責任でリスクを冒さなければいけないスポーツ」と書かれています。

自陣の安全なところでパスを回していてもいつになっても得点は入りません。敵陣に攻め込んでいって、リスクを冒してパスやドリブルをしなければなりません。野球で言うと、盗塁やダイビングキャッチなどがその例なのでしょうが(ほかにももっとある)、特にサッカーはリスクを冒さないと、チャレンジしないと、道は開けない。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
[99]  [98]  [97]  [96]  [95]  [94]  [93]  [92]  [91]  [90]  [89
カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
ブログ内検索
最新のコメント
[10/03 Rakuna]
[10/03 セレス]
[09/25 Rakuna]
[09/25 セレス]
[08/22 Rakuna]
[08/22 セレス]
バーコード
アーカイブ
カウンター
Admin / Write
忍者ブログ [PR]