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兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久なるを睹ざるなり(『孫子』)
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「戦国人物紹介」

■御館の乱 1578-79 (前編)

御館(おたて)とは、謙信に関東管領を譲った上杉憲政の居館で、春日山城下に築かれた館のことである。いまは御館公園として跡が残っている。御館の乱とは、謙信の急死後に養子である上杉景勝と上杉景虎の間で起こった争いであり、越後国内を二分した内乱である。

1578年三月九日、謙信は春日山城内で倒れ、意識が戻らないまま四日後に死去した。その後、謙信の葬儀が行われ、景勝、景虎とも参列したというから、謙信の死後すぐに乱が勃発したのではない。一般的には、景勝はいち早く春日山城の本丸に入り、金蔵、兵器蔵を押さえ、謙信の後継者を宣言し、春日山城の二の丸にいる景虎に攻撃を開始、これにより景虎は二の丸を退き、上杉憲政のいた御館に入ったと言われる。ただ、良質な資料では景勝、景虎のどちらが先に攻撃を仕掛けたかはわからず、両者の間に戦端が開かれたのが確認できるのは、五月五日の大場合戦からである。また景虎が御館に入ったのは、五月十三日のことである。およそ二ヶ月間は景勝体制が承認されていたことになるが、両者の確執が越後全土を巻き込んだ内乱へと発展していくことになる。

景勝側には謙信の側近である斎藤朝信や直江信綱(景綱の女婿)らのほか、下越の豪族である揚北衆の大半(色部長実、新発田長敦、本庄繁長ら)が味方した。景虎側には上杉憲政(前関東管領)、上杉景信(古志長尾家の当主)、本庄秀綱、北条(きたじょう)高広・景広父子らが味方した。このほか、周辺の勢力もことごとくが景虎を支持した。実家である北条氏のほか、北条氏と同盟関係にあった武田氏、伊達氏、蘆名氏などである。このことから、国内的には景勝が、国外的には景虎が後継者と見られていたのではないかと見る向きもある。家臣たちは景勝を実質的な後継者(家督を継ぐかは別として)と見ていたが、(謙信は)国外への周知はしていなかったということになる。

五月十七日、景虎側は桃井義孝(伊豆守、信濃飯山城主)を主将とする約六千の軍を春日山城に向かわせるが、春日山城に攻め入ったところで景勝側の反撃に遭い敗退、桃井も戦死した。緒戦に勝利した景勝だったが、状況は景勝側に不利であった。中越の大半は景虎派であり、景勝派の下越、実家の上田長尾家の本拠である坂戸城とは分断されており、さらに坂戸城方面には上野厩橋城から北条高広・景広の軍が迫っていた。ここが突破されれば、関東からの北条氏の進撃路が確保されることになる。しかし、景虎の実家である北条氏の氏政・氏照は鬼怒川河畔で佐竹氏と交戦中であり、景虎に援軍を送ることができなかった。そこで同盟関係にあった武田勝頼に軍勢の派遣を依頼した。これを受けて武田信豊(典厩信繁の子)らが率いる二万の武田軍が信越国境に送られた。これだけの戦略的優位を築いた景虎の外交能力は非凡と言える。

景勝は窮地に追い込まれたが、北信濃と東上野の上杉領割譲と一万両の大金を条件に武田勝頼との和睦交渉を開始する。また、御館を攻め、迎え撃ってきた景虎軍を撃破した。景虎側は居多ヶ浜で上杉景信が討ち死にするなど大敗して御館に引き上げた。景虎側は御館にこもって武田軍の救援を待ったが、勝頼に逡巡が生じる。このまま景勝を攻めても少なくない損害が出ることは疑いない。また景虎が勝利すれば、武田家は北から東、南まで北条方の勢力に囲まれることになる。一方、景勝と和睦すれば無傷で領土と大金が手に入るのである。ここに来て勝頼の態度は一転し、景勝との和睦に応じ、景勝と景虎の間の和睦の仲介に動くことになる。結局、勝頼は「和平がなった」として八月二十八日に甲斐に帰国する。武田・北条・上杉(景虎)の三国同盟が成る機会は永遠に失われた。そして、この勝頼の打算的な態度は北条氏政の恨みを買うことになる。信長の武田攻めに際して、氏政は勝頼の味方をするどころか、敵となって武田領に攻め込んでくるのである。
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